忘れてはいけない喜びを。

ゲルのヨロール

 

豊かな美しい故郷の

高く美しい丘の上に

大いなるゲルを建て

広大なる美しい草原に

さまざまな花咲き乱れ

すべての人々の

楽しみ喜びが始まる時

楽園となり

喜びの園となりし

紐も飾りもない

純白なゲルを建て

人々皆より集い

一族の人々皆より集い

大いなる宴を催し

喜びにひたっている

白樺の木を曲げ

多くの穴をあけてつくった

すべての根源となりし

美しい輪のような天窓トーノをもつ

松の木を矯めて

太さ細さを合わせ

八方に広がった

太陽の光線をかたどり

美く作り上げた屋根材オニをもつ

柳の木を

右に左に正しく配置し

鹿の皮を用いて

穴に通して固定した

立派な美しい壁ハナをもつ

白樺の木を削り

松の木を貼り

落葉松をかんなで削って

凹凸をなくしてつくった

誰をも招き入れる

立派な扉がある

〜省略〜

鏡のような色の天空より降った

雨のめぐみであり

脂肪のような色をした大地より生えた

草のめぐみである

雌馬の乳を

美しい革袋に

長い間発酵させた

清浄なる飲み物の王様である

香しき馬乳酒を

なみなみと注いで

多くの人々にすすめている

この家の

羊たちが柵に満ち

馬群が草原に満ち

立派な五蓄の群が

まもなく百万頭にもなり

さらに百万頭にもなり

子宝にめぐまれた家と言われ

立派な競走馬の主と言われ

立派な人々の集まる家と言われ

その人々のすばらしい駿馬を外につなぎ

人の道にもとらないと言われ

冬にも豊かに

夏にも豊かに暮らせますよう

お祈りの言葉を

申し上げます

 

ゲルが建つ前に、富士宮の市立図書館で出会った本

遊牧民の建築術 ゲルのコスモロジー」から

 

 

一族の人々皆より集い

大いなる宴を催し

喜びにひたろう。

この歌に出会い

私は忘れてはいけない喜びを思い出しました。